
必見!なぜ空き家にリスクや問題点があるのか?【㊙不動産のプロ中島 崇が解説】政府の対応策を解説。
日本全国で空き家が増加し、オーナーの皆さまにとって避けては通れない問題となっています。「空き家をそのままにしておいても大丈夫だろう」という考えは、思わぬリスクや大きな負担につながる可能性があります。本記事では、空き家を放置することで発生する主なリスクや法的責任、行政の対策や支援策、今オーナーが取るべき具体的な行動指針まで、わかりやすくご紹介します。空き家を安全に管理し、資産価値を守るための第一歩をぜひ一緒に考えていきましょう。
空き家を放置するとオーナーに及ぶ主なリスク
空き家を放置すると、オーナーであるあなたに以下のような重大なリスクが及びます。まず、固定資産税や都市計画税の優遇措置が受けられなくなる仕組みです。住宅用地であれば固定資産税は6分の1、都市計画税は3分の1に軽減される場合がありますが、「管理不全空き家」や「特定空き家」に指定されると、この優遇が解除され、税負担が最大6倍に跳ね上がります。その際、行政からの“助言・指導”→“勧告”→“命令”→“行政代執行”と段階的に進められ、最終的には解体費用も含めて所有者に請求が行われることになります。
| リスク分類 | 内容 | オーナーへの影響 |
|---|---|---|
| 税負担 | 固定資産税・都市計画税の軽減が解除 | 税額が最大6倍に増加 |
| 安全・治安 | 倒壊・火災・不法侵入の可能性 | 事故・犯罪の被害、責任追及 |
| 資産・地域環境 | 資産価値の低下、景観・衛生の悪化 | 損害賠償、近隣とのトラブル |
また、老朽化により建物が倒壊したり、火災・放火や不法侵入が発生したりする安全・治安面のリスクも無視できません。例えば劣化した外壁が落下し第三者に重大な被害を与えた場合、損害賠償として5,000万円以上に及ぶケースも報告されていますし、火災被害による賠償額が6,000万円を超える例もあり得ます。さらに、不法侵入や不法投棄によるゴミの堆積などは、地域の衛生環境を悪化させることにつながります。
最後に、資産価値や地域環境への悪影響と、それに伴う法的責任です。空き家の老朽化や管理不備により資産価値が急激に下落し、将来的な活用が難しくなるリスクがあります。また、建物が損害を与えた場合には、民法717条(工作物の損壊責任)などに基づき、オーナーが損害賠償を請求されることもあり得ます。これらのリスクはいずれも、適切な管理や対応がなされないことで深刻化するため、早期の対策が欠かせません。
空き家問題の社会的・行政的背景と課題
まず、全国における空き家の数についてですが、2023年10月時点の住宅・土地統計調査によると、空き家戸数は約900万戸に達し、空き家率は13.8%と過去最高となっています。過去30年間で倍増している深刻な状況です 。
こうした空き家の増加背景には、少子高齢化や人口減少といった日本全体の社会構造変化があります。地方を中心に人口が流出し、住居需要が低下。加えて相続によって空き家を取得しても、遠方で管理が困難、処分に費用がかかるなどの理由で放置されるケースが多く見られます 。
また、所有者が不明・相続・共有登記未完了によって、管理や行政の対応が難航するケースも多く存在します。特に「その他の空き家」(賃貸用や売却用、二次的住宅を除く長期放置物件)は全国で約385万戸にのぼり、管理不全のリスクが極めて高いとされています 。
さらに、行政にとっても空き家問題は大きな負担です。倒壊・不法侵入・景観悪化など地域社会への波及被害が増す中、所有者の所在地が不明であったり、対応が後手に回る事例も多く、行政調査や是正指導にかかるコスト・人手も増大しています 。
| 課題分類 | 具体内容 | 背景・影響 |
|---|---|---|
| 現状の統計 | 空き家数:約900万戸、空き家率:13.8% | 30年で倍増し、深刻な社会課題 |
| 所有・管理の困難 | 相続未処理、所有者不明、共有名義など | 管理放棄や行政対応の停滞につながる |
| 行政・地域への波及 | 倒壊・防犯・景観悪化など | 地域の安全・資産価値・住環境に悪影響 |
政府による法律改正と対応策のポイント
政府は、空き家問題への対応を強化するため、2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下、空き家対策法)を施行しました。この法律では、倒壊や衛生上の危険、景観の悪化などの理由で「特定空き家」と認定された場合、行政から助言・指導・勧告を受け、改善されない場合には固定資産税や都市計画税の軽減措置が解除されます。これにより、所有者への適切な管理の義務が強化されています。
その後、令和5年(2023年)12月13日には、同法の一部が改正され「管理不全空き家」という新たな区分が導入されました。この新区分は、特定空き家には至らないものの放置すれば問題化するおそれのある空き家が対象です。市区町村はこの状態に該当する空き家を指導・勧告の対象とでき、改善が見られない場合には税の軽減措置を解除できるようになりました。結果として、所有者には早期の対応がより一層求められています。
また、改正に併せて、新たに以下のような支援制度や仕組みも整備されています。
| 制度名 | 内容 | 空き家オーナーへのメリット |
|---|---|---|
| 空家等管理活用支援法人 | NPO法人などを市区町村が指定し、空き家管理や活用の支援・相談を提供 | 専門機関による相談・マッチングで活用や管理がスムーズに |
| 空家等活用促進区域 | 市区町村が対象区域を指定し、用途変更や建て替えの規制緩和を進める | 法規制の緩和によって活用の幅が広がる |
| 代執行の円滑化 | 緊急時には手続を省略して行政が撤去・解体を実施可能に | 所有者不在・対応困難な場合でも迅速に対応 |
さらに、改正法では相続登記の義務化に関連する措置も強化されています。相続登記がされていない場合、所有者不明の空き家が多く管理の適正化が難しいという課題がありましたが、これに対して、相続登記の義務化や補助金制度(解体・改修・活用等)を通じ、所有者が適切な対応を取りやすくする支援策も整備されています。
空き家オーナーとして今すぐ取るべき対策と行動指針
空き家を所有するオーナー様がすぐに取り組むべき対策として、「方針決定」「補助制度の活用」「安心できる管理体制の構築」の3点に分けてわかりやすくご案内いたします。
| 対策の分野 | 具体的内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 方針の早期決定 | 売却・活用・解体などの方向性を早めに整理し決定する | 判断が遅れると行政指導や特定空き家の指定リスクが高まる |
| 補助金や支援制度の活用 | 自治体や国の補助制度(解体・改修・取得支援など)を確認し、要件に応じて申請する | 費用負担を軽減しつつ、安全確保や利活用の実現を支援 |
| 管理体制の構築 | 専門の管理サービスや自治体相談窓口を利用し、定期点検や適切な対応を整備する | 倒壊・火災・不法侵入などのリスクを低減し、地域や自身の資産を守る |
まずは、空き家に対して「売却」「活用」「解体」などの方向性について、自身の意向や状況をもとにできるだけ早く意思を固めることが重要です。方向性を明確にすれば、行政から「特定空き家」として指導・勧告を受ける前に、先手で対応できます。
また、国や自治体では空き家解体に関する補助金や、改修・取得に関する支援制度を設けており、費用の軽減に役立ちます。例えば、解体費の一部補助、改修費用の支援、取得後の活用に向けた助成などが自治体ごとに多数ありますので、お住まいの自治体の公式情報を確認のうえ、条件を満たす場合は早期に申請手続きを行うことが推奨されます(補助制度には工事前申請や年度単位の予算上限があるため注意が必要です)。
さらに、安全で安心な管理体制を整えるため、管理サービスの活用や自治体の相談窓口への相談も有効です。不法侵入や倒壊リスクを防ぐため、専門業者による定期的な点検や対応が安心です。「アキサポ」のような空き家活用サービスを利用すれば、自己負担0円から利活用を始められるケースもあります。
これらの対策を組み合わせることで、空き家のリスクを軽減しつつ、費用負担を抑えて地域環境や自身の資産価値を守ることが可能です。まずは自治体の補助制度や管理サービスをしっかり比較・検討して、早めに行動に移すことが大切です。
まとめ
空き家を所有しているオーナーにとって、空き家を放置するリスクは経済的・法的・安全面と幅広く及びます。税制の優遇が失われたり、倒壊や火災のリスク拡大、地域への悪影響など、問題を先送りにすればするほど責任や負担は増してしまいます。法律改正により、管理不全空き家への行政措置が強化され、補助金や相談窓口も整備されています。まずは早期に方針を定め、各種支援策を積極的に活用しながら、安全かつ計画的に空き家を管理・活用していくことが大切です。